可視化

警察庁有識者研究会がこのほど、取り調べや捜査の在り方についての報告書をまとめました。
冤罪を無くすために不可欠の「取り調べの全面可視化」については、12人の委員の意見が分かれ、残念ながら結論に至りませんでした。
5年前の枚方事件では客観的な証拠はなく、私や小堀副市長を起訴した検察の根拠は関係者の供述のみ。このため、拷問のような取り調べを行って精神的に追い詰め、言ってもいないことを供述調書に仕立ててサインを強要するのが検察のやり方でした。
事実でなくても、一旦サインしてしまうと、それを裁判で覆すことは、小沢一郎民主党代表に関する裁判の石川知裕議員のように、ICレコーダーで取り調べを隠し録りしない限り極めて困難です。
調書さえ取れば裁判で有罪にできると考えるから、検察は自分たちの筋書き通りの調書にサインさせようと、密室で容疑者を何時間も拘束して徹底的に人格を破壊する取り調べをします。
このすさまじさは、経験した者でないと分からないでしょう。
だからこそ、厚労省の村木さんを陥れようとして逮捕された検察幹部までが、自分が逮捕されたとたん、「取り調べを可視化してほしい」と求めるようなおかしなことが起こるのです。
無罪が確定して、小堀副市長が受けたメチャクチャな取り調べの実態が明らかになり、元検事総長が公の席で謝罪しています。
事件に関係のない人や家族まで逮捕するぞ、と密室で脅されれば、その人たちを守ろうとして屈してしまう人がほとんどではないでしょうか?
今思い返すと死ぬほど悔しいのですが、私もその一人でした。
そして、ふだん「人権」を声高に叫んでいる人達からさえ「供述調書にサインした責任が問われる」と、面と向かって言われた時は、耳を疑い、無念の涙を流したのです。
多くの人が、こうしたことに「我れ関せず」や「見て見ぬふり」をするのでなく、「明日は我が身かも」、と想像力を働かさなければ冤罪はなくなりません。
有識者研究会では、
全面可視化賛成派・・・一部だけの可視化では、”いいとこ撮り”されて信用性がない
反対派・・・容疑者が率直な供述ができなくなり真相究明に支障が出る
検察の在り方検討会議でも同様の意見の堂々巡りでした。
可視化すると真相究明ができなくなるというナンセンスな理屈は全く理解できません。
少なくとも可視化することによって、今も密室で平然と行われている拷問や脅迫、誘導はなくなります。
いたずらに不毛な議論を長引かせている間にも、罪のない人が陥れられ、冤罪が生まれてしまう可能性があります。
法治国家でありながら、このような実態をいつまでも放置して良いはずはありません。