再審取り消し

三重県名張市で1961年に起きた「名張毒ぶどう酒事件」の再審請求差し戻し審で、名古屋高裁が死刑囚の奥西勝さんの再審開始の取り消しを決定。死刑確定後繰り返されてきた再審の門がまた閉ざされました。
いつやって来るか分からない死刑の執行に怯えながら、死刑囚として40年の歳月を過ごされ現在86歳、疑いを晴らすことができなかった奥西さんの心情を思うとやり切れない気持ちです。
事件はもともと物証が乏しく、裁判は捜査段階の「自白」に頼ってきた形ですが、奥西さんはその後一貫して否認。一審では無罪判決が出されており、7度目となる今回の再審請求では「自白とは違う毒物が使用された疑いがある」として、一度は再審決定がなされました。
「自白」については、密室での拷問のような取り調べで強要されたことは容易に想像できることです。
裁判所が、密室でつくられた「自白」に任意性のないことを見抜かないまま自白調書を偏重してきたことが、過去に多くの冤罪を生んできました。
そして、そうした裁判所のもとでまた、あろうことか自分たちのストーリーに基づいて証拠まで捏造する「誤った正義感」を持つ検察の体質を助長してきたと言えるのではないでしょうか。
「疑わしきは被告人の利益に」、「推定無罪」の刑事裁判の原則に戻って、速やかに再審を開始すべきです。
そして、この事件のように冤罪の可能性がある事件においては、まず死刑の執行を停止すべきだと考えます。