調書ねつ造と可視化

先日、兵庫県警で調書のねつ造事件が発覚しました。
警部補と巡査部長の二人が、覚醒剤事件の捜査に関連して関係者の虚偽の供述調書を作成した、との疑いです。

昨年には、遠隔ウイルスによる犯罪予告メールで4人が誤認逮捕され、そのうち2人が、取り調べのさいに「このままだと少年院に行きだ」などと脅され、犯してもいない罪を認める「自白」調書が作成されていたことも明らかになっています。

ネパール人男性の無罪判決が確定した東京電力女性社員殺害事件でも、検察側が証拠を開示しなかったことが冤罪の原因とされています。

こうした事件について、なぜ「自白」調書が作成され、冤罪が生まれたのか、捜査を担った司法当局やそれを報道したマスコミによって徹底した検証がなされたのでしょうか?

18日、法制審議会特別部会で示された「新しい刑事司法制度の基本構想案」は、取り調べの可視化(録音・録画)について、可視化の対象が裁判員裁判の事件に絞られるなど、極めて不十分な内容です。

同特別部会は、大阪地検特捜部で証拠の改ざん・隠蔽があった村木厚子さんの事件を機に発足した「検察の在り方検討会議」の提言を受けて設置されたものでした。
冤罪をなくし、捜査への信頼を回復するためにも、取り調べの全面可視化が強く求められていただけに、全く期待が損なわれてしまいました。

昨年末の衆議院総選挙で、一部を除いて司法制度改革についてほとんど取り上げられていなかったことも、人々の関心を薄れさせていくことにつながり、非常に残念です。

犯罪予告メール事件に見られるように、誰もが犯人にされる可能性をはらんでいる中で、こうした問題を風化させず、決して冤罪を起こさない仕組み作りをぜひとも進めていかなければなりません。