再審棄却〜名張毒ぶどう酒事件

冤罪をテーマにした映画「約束」にも描かれた「名張毒ぶどう酒事件」について、最高裁は再審を認めない決定を下しました。再審開始を信じ、期待していただけに非常に残念な結果です。
52年前に三重・名張市で、毒物入りのぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡したこの事件は、一審の津地裁で無罪、名古屋高裁最高裁で死刑、その後、高裁でいったん再審の開始決定がされましたが、検察の反対による差し戻し異議審で再審が取り消されるという経過をたどり、弁護側の特別抗告により今回の最高裁判断となりました。
もともと”自白”以外の物証に乏しい事件であり、その乏しい物証の中で最も重要といえる「混入された毒物」が、”自白”とは違う別の農薬であった疑いがある、と、基本的な証拠物をめぐって再審請求が出されていました。
再審請求とは、有罪無罪の結論を出す場ではなく、裁判をやり直すかどうかを決定する場であり、この事件のように重大な疑問がある死刑判決に対して、もう一度裁判をやり直すことすらできないのはなぜなのでしょうか。
「疑わしきは罰せず」の刑事裁判の基本理念は、まるで絵に描いたモチで、現実の裁判の世界では全く違う論理が働いているとしか言いようのない結果です。
今回のように、いったん再審開始決定が出ても検察が異議を唱えればひっくり返ってしまうという制度自体、結局は検察の言いなりに司法が動いているということではないでしょうか。
こんな状況で、もし仮に死刑が執行されたなら、本当に取り返しがつかないことになってしまいます。
自白偏重の弊害、つまり、裁判での証言よりも捜査段階で密室で強要された”自白”を重視する今の裁判のありかたを改め、取り調べの全面可視化や証拠の全面開示を進めなければ冤罪はなくならないでしょう。
87歳、事件に翻弄され続けてきた奥西勝さんの心境を思うと、いたたまれません。

メチャハピー祭

「大阪メチャハピー祭」が14日、大阪城ホールをメインにサテライト会場も含め府下7ヵ所同時進行で開催されました。枚方会場では市内の小学校や幼稚園だけでなく、東京・千葉など遠方からの来演も含めて計31チームが参加。関西外大の留学生もボランティアとして活躍するなど、会場の岡東中央公園周辺は大いに賑わい、活気にあふれました。

大阪の青少年の補導率が高いことを知った欠野アズ紗さん(NPO法人OHP理事長)が、子どもたちが励まし合い絆を深めることができるイベントを立ち上げようとスタートさせて今年で14回目の催しで、7年前から6ヵ所のサテライト会場の一つに枚方会場も加わりました。
枚方実行委員会代表の岡田邦央さんが広報誌「メチャハピータイムス」の中で枚方会場発足のさいのエピソードを紹介されていますが、枚方で講演された欠野さんと当時市長だった私とが意気投合し、「ぜひ枚方でもメチャハッピー祭をやりたい」と申し出たことがきっかけでした。
当時、映画「学び座」にもなった稚内の「南中ソーラン」が注目を集め、学校や地域の絆を強めるためにぜひ枚方でも取り組みたいと考え、教育長をはじめ関係者に相談したことを覚えています。
この日のために練習を重ねてこられた参加者のみなさん、準備や運営に走り回られたボランティアスタッフのみなさん、本当にお疲れさまでした。

特捜裁判判決

大阪地検特捜部の証拠改ざん隠ぺい事件で、犯人隠避に問われた大坪弘道・元特捜部長、佐賀元明・元同副部長に対し、控訴審でも有罪判決が下されました。

当時の大阪地検特捜部は、証拠を捏造してまで村木厚子さんを逮捕し、無罪を知りながら組織ぐるみで犯罪人に仕立て上げ、他の検事もそれを知りながら黙認していました。つまり、この事件は決して一人の検事の暴走によるものではなく、地検特捜部という組織自体が、こうした不祥事を起こす体質を持っていたからこそ起こったのです。

しかし検察は、信頼を根本から揺るがした大不祥事でありながら、真相を徹底究明しウミを出し切って体質を改善することをせず、事件を矮小化して、改ざんした検事と上司2人の計3人をトカゲのしっぽ切りのごとく罪に問う道を選択。これを不服とする被告側が不当処分として訴えたのが、この裁判の底流にある背景だと私には写りました。

”このような改ざんや隠ぺいは他にもあるのに、何故我々だけがスケープゴートにされなければならないのか”・・・というのが被告人の本音ではないでしょうか。

信頼を回復するには、検察内部に巣食う”でっち上げ体質”という”巨悪”を二度と起こさないようにするため、徹底究明のうえ解体的な出直しをすることが必要だったのです。なのに結局、裁判所も含めた司法官僚がそれをせず、臭いものに蓋をしてしまった、そう感じるのは私一人でしょうか。

ほぼ同じ時期に、同じ体質の中で捜査が進められた枚方談合事件では、小堀副市長の無罪が確定し、「官製談合」という検察側のストーリーが事実ではなかったことが、後に判明しました。
つまり、私が指示を出して談合させたという検察ストーリーに反し、指示を受けたと断罪された小堀さんが完全無罪を勝ち取られたのです。枚方事件にはこのような矛盾点がたくさんあったのですが、検察は真実には目を背けて突き進みました。

真相を解明するよりも大切なもの・・・それはいったい何なのでしょう。
証拠を改ざんしてまで守ろうとしたもの・・・それはいったい何なのでしょう。

結局、この証拠改ざん隠ぺい事件の裁判を通して、無実の者を罪に陥れるという恐るべき検察の体質を生んだ真相や背景について深く掘り下げられることはありませんでした。

ここにメスを入れてこそ、改ざんなどの不正や拷問のような密室での取り調べなどによる冤罪をなくすために、証拠品の全面開示や取り調べの可視化など抜本的な改革が進み、失墜した信頼が回復できるのです。決してこの判決で事件を風化させてはいけないと思います。



 


 

在宅支援活動

高齢者の在宅医療・福祉を支える活動を行っている、NPO法人デイコールサービス協会の講演会が8日、メセナ枚方会館で開かれ、松本敏理事長が研究・活動報告を行いました。
この活動の柱となっている「デイコール」の考え方は、医師と患者、地域と高齢者など、人と人との対話による心の交流です。
その考えを基本に、かつて枚方市でも旧厚生省のモデル事業として3年間、医師会等の協力で、毎日定時にかかりつけ医が専用の電話機で在宅の患者に直接話しかける「デイコール問診」を実施しました。
当時その事業に関わってこられた松本さんの報告では、通院や入院に伴う様々な負担軽減をはじめ、毎日の医師の問診による症状の改善や、認知症に対する予防効果があったこと、さらに、こうした医療・福祉のネットワークがうまく機能すれば、ひいては医療費等の軽減にもつながるとされています。
松本さんはその経験を踏まえてNPO法人デイコールサービス協会を設立、大学院で研究しながら継続した活動を試みて来られました。
現在、私の母は認知症で寝たきりの生活ですが、認知症患者の推計は約460万人。母と同年齢の85歳以上では、実に40%以上が認知症といわれています。一方で、一人暮らしの高齢者は約480万人にのぼり、孤独死は増加しています。
また、こうした社会構造が社会保障費等の増大を招き、災害対策の在り方に大きく影響しているのも現実です。
無縁社会」の広がりに歯止めをかけるためにも、つながりを求める人々を支えるヒューマンネットワークの活動は大切です。

「クロヨン」50周年

今年は、黒部ダム及び黒部川第四発電所ができて50周年。

このほどエネルギー政策研究会で現地を視察訪問するとともに、「クロヨン」を挟んで長野県側の大町市富山県側の黒部市を訪ね、50周年事業など黒部周辺の魅力を活かしたまちづくりについて説明を受けました。
同研究会は、福島原発の事故を踏まえ、重要な政策テーマであるエネルギー問題について研鑽を深めようと、枚方、寝屋川、交野各市の有志議員、市民、事業者などをメンバーに発足。これまで高浜原子力発電所舞鶴火力発電所、中央給電指令所、堺太陽光発電所などを訪問研修してきました。
今回の信濃大町扇沢―(関電トンネル)―黒部ダム―(黒部トンネル)―黒部川第四発電所―(関電専用鉄道)―欅平―(黒部峡谷鉄道)―宇奈月のコースのうち、黒部ダムから先10キロ余りの黒部トンネル、地下200メートルにある黒部川第四発電所、そして関電専用鉄道で欅平へ至るルートは、いわゆる「関電ルート」として一般の観光客は受け入れていないところです。
途中、小型のケーブルのようなインクラインで地下に降り、トロッコ列車で高熱隧道を抜け、車両を一両乗せられる竪坑エレベーターで移動するなど、どれもが貴重な体験でした。

さかのぼること50年の巨大プロジェクトは、当時の最先端の技術が駆使されたものの、歴史に残る難工事として記録されています。
本州を縦断するフォッサマグナがこの地域に通っているためで、トンネル工事の途中で大規模な破砕帯にぶつかり、大量の冷たい伏流水の噴出や落盤事故の発生、さらに、急峻な斜面での滑落、冬季の雪崩などで、7年余の歳月をかけた完成までに171人もの尊い命が失われました。ダムには殉職者の方々の慰霊碑があります。
かつて中学の修学旅行で黒部ダムに立ち寄った懐かしい記憶がありますが、その時は建設工事に携わった人たちの苦労がこれほどまでとは思いもしませんでした。
完成から半世紀を経て発電の形態も様々に形を変えましたが、高度経済成長時代に欠かせなかった電力の供給を支えてきたシステムの原点を今回の研修でかいま見たような気がします。
さて、関西電力管内では、22日に電力使用量がこの夏最高の96%を記録、火力発電所でのトラブルと重なったことで、他の電力会社から計50万キロワットの緊急応援を求める事態となりました。
エネルギー自給率わずか4%というわが国で、しかも原発事故により甚大な被害が発生した深刻な現状を打開するため、・原発に代わる新エネルギーへのシフト・発送電分離電力自由化など新しい制度の整備・資源としての電気に対する市民の意識改革―など、エネルギー政策として取り組み、解決しなければならない課題はたくさんあります。

映画でまちおこし

枚方・枚二小校区の朝日丘町青年会が、このほど、まちおこしに向けた映画祭を開催しました。
上映されたのは、明石のまちを舞台にした「恋する時の街あかし」で、映画を鑑賞した後、ゲストの竹内みのる監督を囲んで懇談会が行われました。

 【写真は竹内みのる監督(左)と朝日丘町青年会の嶋田研志郎代表】
校区の親睦会で明石を訪問したさい、映画のポスターを見かけた青年会のメンバーが、地元のまちおこしにこの映画を生かしたいと竹内監督に連絡したことから、この日の映画上映&監督との懇談会が実現しました。
映画「恋する時の街あかし」は、映像やドラマの制作などを通して明石のまちおこしを行う目的で設立された「スタジオグリタ」が初めて制作を手がけたもので、この春に完成。
明石焼きをはじめ、天文科学館、明石城跡公園、明石海峡大橋など、明石のまちの魅力がふんだんに登場するほか、地元の神社や飲食店、各種サークルなどからのエールも収録されており、これまで明石市内のコミュニティセンターなどで順次自主上映され、明石のまちの活性化に一役買っています。
スタジオグリタでは、、身近に映画作りができればまちおこしにつながると、映画制作の講座なども実施。二作目として「子午線に吹く風」の撮影も決まっているそうです。
身近に様々な魅力発信ができる時代、若い人たちの手で「ひらコン」などのまちおこしイベントも盛り上がってきています。
「今度は、映画作りに挑戦!」―枚方でもこうした夢を実現していく若いパワーに期待しています。

退職手当審査会

私が10年前及び5年前に支給された市長退職手当について、竹内現市長が返納を求める方針を決めたことについて、29日夜、市の退職手当審査会(松葉知幸会長)が市役所内で開かれ、代理人弁護士とともに傍聴しました。
同審査会は、退職手当の返納などの重大な不利益処分について、適正かどうかを審査するため、市の条例に基づいて設置された市長の附属機関です。
この問題については、先般開かれた聴聞の場で、私の主張を意見陳述書にまとめて提出し、見解を示しました。(7月12日付ブログに掲載)
しかし、聴聞主宰者の石渡俊博・枚方市監査委員事務局長がまとめた聴聞調書及び報告書にその主張は全く反映されず、「当事者の主張に理由がない」と判断。そこには十分に検討された形跡もなく、私には、まるで形だけの聴聞、結論ありきの報告書のように受け取れました。
このため、審査会に対し同日、先の聴聞会で提出した意見陳述書と同趣旨の意見書(本件の根拠となる法令が存在しないこと、返納の要件を満たすものでないことなどが論点)を改めて提出しました。
退職手当審査会は、引き続き8月にも開催される予定です。
残念ながら上告は棄却されましたが、そもそもこの事件における検察ストーリー、そして判決には重大な事実誤認があることから、現在再審請求を準備しています。
審査会で十分に時間をかけて公正な審査を行っていただきたいと願っています。